B-Max Racing ストーリー第12話

B-Max Story 第2章 (2021-)

チームオーナーの逡巡

スーパーGTの仕事を失ったチームは、ミドルフォーミュラに活路を見出したが、改めて気付かされたのは、日本でレースを事業として継続するには、自動車メーカーとの関わりは不可欠ということだった。

組田はニッサン以外のメーカーにどうやってアプローチするかを逡巡した。

「SFとスーパーGTの2大トップカテゴリーへの参戦を考えると、アプローチできるメーカーは残り二つしかないのは誰の目にも明らかです。でも、だからといって両方に交渉することはできません。相手に振り向いてもらうために、相手が興味を惹かれるものは何か、それを見つけ出して交渉できるかが大きなポイントになります」

組田は、考え抜いた末、交渉の材料を、自らもチーム運営の柱のひとつとしているドライバー育成に絞った。そして、自らの提案を受け入れてくれる可能性を感じたHRC(ホンダレーシング)に照準を当て、どうすれば話を聞いてもらえるのか、何をストロングポイントとして交渉に当たれば良いのか、さまざまなケースを想定して戦略を練った。

意外かもしれないが、この時点で、組田はHRCとのパイプは無いに等しかった。

HRCへの飛び込み交渉

幸いだったのは、2017年にスーパーフォーミュラに参戦する際、エンジン供給を依頼したときの部長が、まだ在籍していた。飛び込みに等しいHRCへの交渉において、細い糸ながら、その部長との繋がりに一縷の望みを託してアポイントメントを取った。

快く面談に応じてくれた部長に、組田は、ホンダの育成システムは素晴らしい、日本のレース界への貢献も非常に大きい、しかし、現状以上に投資効果を上げ、より効率的に行える余地があるのではないか、特にスクールを卒業したドライバーがもっと活躍できる環境を整えることができるのではないか、という提案をした。それは、常々組田が感じていることだった。

具体的には、こうだ。
少なくない資金を投じて育てたドライバーが、育成枠を外れることは致し方ないことだが、そのドライバーの実力は本当に不足していたのか、育成の方法や与える環境によって、もっと伸びたのではないか。それを見極められるシステムを構築することが、メーカー、ドライバー双方にとって必要ではないか、ということを真剣に訴えたのだ。

事実、育成枠を外れたドライバーが、その後実績を残して、他メーカーと契約に至るケースは過去にもあった。

この年(2021年)も、B-Maxはホンダの育成を外れた名取鉄平を、SFライツで走らせていた。「環境さえ整えば、名取はチャンピオンを獲得できる」と見込んでの起用だった。この結果も見たうえで、B-Maxに育成の仕事を担わせて欲しいと提案した。

そして、名取はジュリアーノ・アレジ、佐藤蓮を退けてチャンピオンを獲得する。

こうして、NISMOとの提携解消は、チームを揺るがす出来事ではあったものの、同時に、その後のチーム運営の進むべき道を決める大きな転機になったのである。

(13)に続く

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