B-Max Racing ストーリー第13話

B-Max Story 第2章 (2021-)

思いがけず訪れたSF初優勝

スーパーGTから退くことになったことで、ミドルフォーミュラにレース事業の軸足を置き、さらにドライバー育成においてメーカーとの提携を模索するB-Maxは、もうひとつ、他のチームにはない特長を持つことになる。

きっかけは、参戦6年目で思いがけず訪れたスーパーフォーミュラの初優勝だった。

2022年シーズン。前年に引き続き松下信治を起用したチームだったが、開幕大会の富士は、まったく良いところなく終わっていた。迎えた第3戦鈴鹿。予選は9位と明るい兆しが見えつつあった。そして、決勝は朝から雨。完全なウェットコンディションのなかレースはスタートを切った。

スタートで大きくジャンプアップした松下は、1周目5位、6周目4位、9周目に3位と、序盤で表彰台圏内まで追い上げた。この躍進には、スタート直前のグリッド上でのアジャストがあった。

当時を思い出すように組田が言う。
「実はあの時、本山監督と田坂エンジニアが相談して、スタート直前のグリッドで内圧を調整したんです。それがドンピシャにはまりました」

3位に順位を上げた後も、勢いの衰えない松下は、タイヤを労るため、時折濡れた路面を選んで走りながら、残り6周となったシケインで2位の牧野を、残り2周となった1コーナーでトップ野尻を大外からかわし、大逆転のチェッカーを受けたのだ。

劇画のような展開での優勝に、歓喜に湧くクルーたち。その輪のなかには、喜びの涙を流す組田と本山監督がいた。

優勝がもたらした地域との繋がり

この優勝で、チームには大きな変化があった。
優勝報告のために、活動拠点としている神奈川県綾瀬市の古塩市長(当時)を表敬訪問し、これをきっかけに市との連携が始まったのだ。

2022年10月には、綾瀬市とチームが連携して地域を活性化するという覚書を締結した。チームはレース活動を通じてホームタウンである綾瀬市をPRし、綾瀬市はチームの活動を広く市民に知らせ、市を上げてチームを応援しようという内容である。

この連携により、チームは、オープンファクトリー(工場の一般公開)や、小学校での出前授業、産業まつりや市庁舎でのSF車両展示などを行い、綾瀬市は応援バスツアーを開催するなど関係を深めていった。両者による事業は年々充実し、古塩市長の勇退後、2024年7月に就任した橘川市長になったあとも継続している。

市役所だけでなく、レーシングカーの展示要請があれば、米軍厚木基地のフェスティバル、高校の文化祭や幼稚園の催しなどにも積極的に協力し、地域における認知度も上がりつつある。

レースでの勝利を目指すだけでなく、チームが社会や地域の役に立てる存在になるにはどうすべきかと考えた一つの答えが、レース界では珍しい「地域密着型チーム」という特長を持つことになったのである。

(14)に続く

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